会長　企画住宅の組み立てから今後のデザイン監修を西岡さ
　　　んにお願いしているのですが、 これからの住まいづく
　　　りで何が大切なのでしょうか

西岡　月並みな言葉なのですが、風と太陽と緑に配慮した住　　　み心地の良い住まいが求められ ていると思います。住
　　　み心地とは住まい手のライフスタイルと感性にあった
　　　住まいの ことですが、これが見栄えや住宅装備に振り
　　　回されて案外疎かにされているのです。

会長　プライバシーを保ちつつ夏は風が通り冬は燦々と太陽
　　　光が得られる住まいですね。

西岡　そうです。そうした四季を感じる豊かな空間の中で子
　　　供も育ち、庭や周囲の緑も育って いくことが「宅育の
　　　家」の根幹をなす考えです。

会長　なるほど。食育という言葉がオーソライズされた形で
　　　ありますが何か関係がありますか？

西岡　はい。生活の三要素「衣食住」について、衣について
　　　は服育、住に対しては宅育という語呂を合わせた私の
　　　造語なのですが、子供の適切な育成を目的として理論
　　　構築した住ま いの考え方なのです。

西岡　この「宅育の家」という新たな企画住宅を立ち上げる
　　　にあたって松尾組さんの強みはなんでしょうか？

会長　住まい作りの中心となる大工さんについて、宮大工の
　　　歴史を持つ大工集団を自前で抱えているという事です
　　　ね。それと松尾グループとして基礎工事や、清掃メン
　　　テナンスなどの事業も抱えているので、建てた後も安
　　　心が置けるという事です。

西岡　デザインやディテールなどについてはどうですか。

会長　すぐれた建築家の難しい仕事を多くこなしてきていま
　　　すので、私を含めて社員が妥協を許さない仕事の仕方
　　　と、目が肥えてきているという事が強みですね。

西岡　それは大きいですね。こうしたことはマニュアルがあ
　　　っても習得できることではありません。
　　　実際の仕事の中で体現していかないと得られないもの
　　　ですから。その他何か？

会長　浮き沈みの激しい建設業の中で70年に渡ってこの地で
　　　建設業を営んでこられたという事に尽きるでしょう。
　　　地域の信頼信用がなければ続かなかったでしょうから

会長　ところで今後住まいはどういう方向になっていくので
　　　しょうか

西岡　少子高齢化、エネルギー・環境問題等、問題への対応
　　　等厳しい社会を予測し、シンプルな生活、近隣コミュ
　　　ニテーを大事にスローな暮らし方が求められると思い
　　　ます。
　　　この「宅育の家」はそうした社会を見据えて考案され
　　　たものです。

会長　住まいの多用なニーズに対して、いくつかシリーズを
　　　つくっているようですが割高になりませんか。

西岡　テラスや庇、棚等住宅装備について標準化を計ってコ
　　　ストアップを防いでいます。
　　　又シリーズ分けすることによって合理的で明快な設計
　　　を可能にしています。ところで合理的な設計・施工で
　　　他社とここは違うというところがありますか？

会長　それはいくつか木造住宅をつくる過程で判ったのです
　　　が、モデユールを一般的には９１０ｍｍが多いのです
　　　が、それを９５０ｍｍにしたことです。これは流通し
　　　ている木材のロスをもっとも合理的に減らせる事と、
　　　廊下階段便所など狭い場所で非常にゆとり感が出てく
　　　ることが判ったという事です。

西岡　今後もこうしたお話を重ねながら子供たちの世代に、
　　　住まいの良い原風景が残せるように、お互いにそれほ
　　　ど残り余り長くはない時間を有効に使っていきましょ
　　　う。